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ダイニチが手がけたコーヒー豆焙煎機、その開発秘話をルポ!

様々な難題をクリアし、23年ぶりの新商品をリリース

新潟市に本社を置き、その名を全国に響かせる家電メーカー「ダイニチ工業」。国内販売シェアトップクラスの「家庭用石油ファンヒーター」と「加湿器」を主力商品に、暖房・空調系家電製品の開発・製造・販売を手がけて高評価を得ています。

今回スポットをあてるのは、同社から23年ぶりのリリースとなる「コーヒー豆焙煎機」の開発に携わった五十嵐さん。より高品質で価格を抑えた新商品の誕生秘話や、研究開発職の面白み、仕事をするうえで常に心がけていることなどを聞きました。

商品開発部

五十嵐 允さん

(2020年入社)

「“明るく前向きに楽しむ”がモットー。休日は趣味のサッカーや散歩を満喫しています」

試行錯誤を繰り返して焙煎の均一化を実現

コーヒー豆焙煎機の開発は、主に「機械設計」「電気設計」「評価」の3業務で構成されており、五十嵐さんは「評価」を担当。焙煎性能の評価結果を各設計担当にフィードバックし、ともにより良い品質を追求しています。

「焙煎によってコーヒーの味は変わるため、そのバラつきを抑える仕組みを考えるのが私の仕事。例えば、保証温度範囲の0~30度なら暑いところでも寒いところでも同じ味を出せるよう、様々な条件下で何度となく試験を行い、必要な機能を加えていきます。そのため、多いときは1日30杯近くのコーヒーを試飲することも。だいぶコーヒーのうんちくを語れるようになりました(笑)」。

商品化までの苦労は数知れず。特に味をそろえるための技術は難度が高いため、時には先輩や上司の知見を借り、アドバイスをもとに試験を繰り返して完成を目指しました。

「カギは部品の精度。台数を増やして評価していくと、コーヒー豆を焙煎する釜と外装部品の境目に隙間ができたり、釜に熱風を送る経路に空気の漏れが生じたり。ともに0.1mm単位のわずかな誤差ですが、均一な焙煎ができない原因はそこにありました。その隙間をどうやって埋めるか。そこが最も苦労したところかもしれません」。改善を加えることで、温度測定部品が、焙煎の状態を正確に測定することができるようになり、煎り具合の個体差を解消。23年ぶりのリリースとなるコーヒー豆焙煎機には、その細部に至るまで、五十嵐さんら技術者のこだわりが注がれています。

  • 五十嵐さんが開発に携わった新・コーヒー豆焙煎機。同社は石油ファンヒーターの開発で培ったヒーターを扱う技術を応用して、焙煎機の開発を行ってきました。

  • 子どもの頃から「機能」のあるものにワクワクしていたという五十嵐さん。「自分も多くの人がワクワクするものをつくりたい!」と思い、家電メーカーである同社を選んだそうです。

開発品が世に出る喜び、意図したものが伝わる醍醐味

この焙煎機は開発に約3年かかり、2023年4月4日に無事リリースされました。「だから私自身も、自分の携わった製品が新商品として世に出ていく喜びを知ったのはつい最近のことなんです(笑)」と五十嵐さん。少しずつユーザーからの感想も届き始め、さらなる充足感を得ているようです。「浅煎りのコーヒーもおいしく飲みやすいことを目指していたため、『浅煎り特有の生臭さがなく酸味が効いていておいしい』との声を聞くと、そこに気づいてくれたことをうれしく思います。もちろん、別の視点からの意見にも面白い発見が続々と。最近は、『良い製品だね』より『おいしい』って言われたい!と思っています。気分は料理人です(笑)」。

また、23年前に焙煎機の開発に携わっていた大先輩からも、「当時はこんなに細かく条件を振ったらここまで仕上がりがそろわなかったよ。これだけやれたら上出来だ」とのお墨付きが。同じ苦労を経験した人の言葉だけに身に染みて、「そうか、ちゃんとうまくできていたんだ」と改めて安堵したそうです。

焙煎こそコーヒーの味を決める心臓部。その評価を任されたことにやりがいを感じると同時に、焙煎機の新たな社内基準をつくることへのプレッシャーもあったと振り返る五十嵐さん。「でも、それさえも面白かった」と笑うタフなメンタリティーも、開発者にとって好ましい資質なのかもしれません。

  • 「自分が開発でこだわった点を分かってくれているレビューを見つけると喜びを感じますね」。発売延期を経て今年リリースされた焙煎機は、五十嵐さんをはじめとした技術者の魂がこもった逸品です。

  • ダイニチ工業のコーヒー関連事業のブランド「カフェプロ」は、コーヒー生豆も取り扱っています。ブランドロゴには、コーポレートロゴにもあるブルーヒーターを象徴する青い円が!

行動力と計画性をもって、常に新たなチャレンジを

コーヒー事業に携わる前は、燃料電池の開発に従事していた五十嵐さん。当時はこんな悩みがありました。「昔から思い立ったらまず行動するタイプだったので、細かなポイントを見落としたり、上司の意図とズレてしまったりして仕事の手戻りが多かったんです。そこで気づいたのが、計画と相談の重要性。燃料電池の試験は一日がかりなので、入念に日程の計画を立て、上司と試験について事前に相談することを心がけたら、少しずつ手戻りが減り、スムーズに仕事を進められるようになりました」。長所でもある行動力と、社会人になって学んだ計画性をバランス良く持ち合わせることで、成長の足がかりをつかんだのです。

学びを生かし、今も大切にしているのは、その日ごとの予定をきっちり立てて仕事に臨むこと。「多忙なときほど朝イチの10分が大切」と、毎朝仕事の進捗を把握しながらやるべきことの優先順位を確認し、効率的な仕事の流れを築いてから動き出しています。

今後の目標は、どんどん新しい仕事にチャレンジすること。「評価だけでなく設計もできるようになれば、自分で試作ができたり、簡易的なソフト変更に対応できる。そこで生まれた余裕を、今よりもっと多様なパターンを試す時間にあて、より良い製品づくりに役立てたいですね」と五十嵐さん。さらに「暖房機と加湿器に追いつけ追い越せの勢いでコーヒー事業を盛り立てます!」と頼もしい決意を語ってくれました。

  • 「明るく前向きに楽しむ」がモットーの五十嵐さん。その言葉通り、誰にでも気さくに話しかける姿が印象的でした。今後も持ち前の明るさを生かして、新しい仕事に絶えず挑戦していく姿が目に浮かびます。

五十嵐さんの必需品は紙とペン。評価の計画や報告資料を作成する際、頭に浮かんだものをざっくり書いていくことで、自然と思考が整理されるのだそうです。「私の場合は、パソコンで改行などを気にしながらキーを打つより、直感的にさーっと作業できる手書きが最適。タイムスケジュールもこの要領で書き出し、終わったものからマルをつけて管理しています」。ちなみに五十嵐さんは、“モノを持たない派”で机上も常にすっきり。使う紙にこだわりはなく、印刷物の白い裏面を利用するエコな人です。

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