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世界を「回す」モノづくり 機械に欠かせない歯車づくりの現場をルポ!

ひとつずつ確実に、歯車を極める。多品種少量生産の歯車専業メーカー

世界中のあらゆる機械に欠かせない「歯車」はモノづくりのシンボル。長岡歯車製作所は新潟県内でも数少ない歯車の専門メーカーとして、多品種小ロットのオーダーメイド製作で多様なニーズに応えています。

「量より質」「易より難」が同社のモットー。確かな技術とノウハウを強みに、難題とされる非円形歯車の生産も実現しました。また材料から旋盤加工、歯切り、熱処理、研削加工までの全工程を、グループ会社とともに一貫して手がけているのも大きな特長です。

今回は同社の工場を突撃し、歯車の豆知識や製作現場の様子などをレポートします。

代表取締役

加納 孝樹さん

「一見単純に見える歯車ですが、実はとても奥深いんです。ぜひ歯車の魅力とモノづくりの面白さを多くの方に知ってもらいたいですね」

あのダヴィンチも描いた「歯車」の歴史

そもそも歯車って何かご存知ですか? 象徴的なのは、時計に使われるあの小さなものでしょう。対になった歯と歯が噛み合いながら回転し、動力を伝える。それが歯車です。

さかのぼること紀元前。エジプトやローマで、水を汲むための装置として用いられたのが歯車の始まりでした。その後、時計や天文計算機などに使われ、15世紀後半にはあのレオナルド・ダ・ヴィンチが歯車の原型を数多くスケッチしていることも分かっています。

そして産業革命以降、機械工業の成長とともに技術は飛躍的に向上しました。「歯形は先人たちの様々な創意工夫によって時代とともに発展し、現在は1/1000mm=1μm単位の超高精度な歯車製造も可能になりました」と案内役の加納社長。電子機器に使われる小さなものから、自動車や産業機械などに使われる大きなものまで、目には見えない場所で私たちの生活を支える歯車は、まさに縁の下の力持ち。皆さんが持っている5円玉の穴にも、工業を表すモチーフとして歯車がデザインされているんですよ!

  • レオナルド・ダ・ヴィンチが残したとされている歯車装置のスケッチ

  • 動力伝達を行う歯車は目的に応じて大きさ・形状もさまざま。工業のシンボルとして5円玉にもデザインされています

「歯切り」「焼入れ」の現場を見学!

製作現場をのぞいてみましょう。顧客のニーズに合わせた「多品種少量生産」が同社の基本。広い工場には金属加工の機械と技術が結集し、多様な歯車を生み出しています。

ホブという刃物を回転させながら歯をつくる「歯切り」は重要な工程の一つ。旋盤加工した材料を、たっぷりの切削油をかけながら削ると、少しずつ歯形が表れ歯車が形づくられていきます。加工機を巧みに操る社員の方々の真剣な表情に、あらゆる特殊形状にも応えるプロ集団の頼もしさを感じます。

歯切りしたものをより硬く強くする「焼入れ」は、グループ会社・長岡電子株式会社のエリアで行われます。工場に入ると、ちょうど高周波による焼入れの真っ最中! 熱して真っ赤になった製品を油に入れて急冷するシーンに遭遇しました。「タバコを吸い上げるときの炎の先が約800度と言われますが、それと同じくらいの温度まで熱し、一気に冷やすことで金属組織を変化させ強度を加えるんです」。ここでは、臨場感あふれる鉄工所の雰囲気を体験できました!

  • バームクーヘンのような形状の材料から、回転する刃物で少しずつ歯形が削り出されていきます

  • 焼入れの瞬間! 真っ赤に熱せられた歯車を油に入れると、一瞬炎が吹き上がりました

多種多様の機械がズラリと並ぶワケ

歯車の精度を極めるのが「歯車研削」。点在する歯車研削ルームは、どれもしっかりと温度管理されています。それもそのはず、1/1000mm単位の高精度加工を必要とされるため加工機も超精密。ドイツ製やスイス製のハイグレードな機械が並び、高額なものでは2億円を下らないというから驚きです!

機械が豊富なのは多品種対応だから。中にはたった1種類の研削のために導入したものもあります。また砥石の交換には時間がかかるため、機械数が多ければ製造を止めずに生産性をキープできるというメリットもあります」と加納社長。ドイツの見本市で購入を決めた最新機械の横には、自分たちでメンテナンスしながら大切に使用している数十年前の古い機械も。同社がいかに顧客それぞれのニーズを大切にしているかが分かる風景です。

工場は冷暖房完備で一年を通じて快適。歯車の精度を保証するために必要なことだとはいえ、作業効率もぐんと高まりそうですね。さらにトイレを全面リニューアルするなど 職場環境の改善にも注力しています。

  • 工場内に並ぶ歯車研削盤の数々。一人が複数の機械を操作することで生産効率を高めています

  • 工場内で最も大型の歯車研削加工機。この機械だけで億単位の価格だとか…

世界を回す、モノづくりの醍醐味

工場を巡ると、歯車がどのような工程を経て完成するのか手に取るように分かります。実はこれ、同社だからこそリアルに実感できることなんです。「焼入れは特殊工程なので専門業者に依頼する会社がほとんど。グループ会社との協業により一貫体制を築いているのは当社の大きな強みです」。その焼入れを担当する長岡電子は敷地内にあり、台車でさっと製品を運べる距離。歯車以外の仕事も多数担うため、そこで得たノウハウを歯車に還元できるというメリットも生まれています。

改めて加納社長に聞きました。この仕事の面白みは何でしょう。「歯車は皆さんが知っているようで知らないもの。でも実は見えないところで機械を動かす、世の中になくてはならないものです。私たちが製作した歯車は、お客様を通して海外でも広く活躍しています。『世界を回す』というダイナミズムは、大きなやりがいにつながるでしょう」。

工業のシンボル、歯車を知ることでモノづくりの根幹を知る。様々な発見や驚きに満ちた、楽しい工場見学でした。

  • 高精度で削り出された歯車には、幾何学的な美しさすら感じられます。まさに機能美ですね

未だ進化を続ける歯車の世界。同社は業界団体主催のヨーロッパ視察などにも積極的に参加し、海外の動向を知るチャンスを大切にしています。長岡にいながらにして世界の最新技術に触れる醍醐味! 技術者にとっては願ってもない好環境ですね。

「当社で活躍しているのは、切り替えの早いポジティブ思考の人。失敗はつきものと考え、それを極度に恐れず挑戦できるタイプはどんどん成長できますよ」と語る加納社長。そのチャレンジマインドこそ、モノづくりへの第一歩なのかもしれません。

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