


常務取締役/佐藤 正亘さん
(株)佐藤商事は、創業の地、長岡市を拠点にパチンコ店「ニューラッキー」を4店舗展開し、地域密着型の堅実な事業経営を進めているアミューズメント企業です。パチンコホール事業をサービス業のひとつとしてとらえている同社は、社員それぞれの持ち味を伸ばす教育に主眼を置くことによって魅力的な店舗を実現し、ファンの拡大に努めています。その独特の経営観や求める人材像などについて、常務取締役の佐藤正亘さんにうかがってきました。
設立/1952年 資本金/2000万円(2009年10月現在)
本社所在地/新潟県長岡市宮内3-2-16 連絡先/0258-32-3946
社員数/120名(2009年10月現在)
売上高/141億円(2009年5月現在)

昭和27年に、パチンコ店「ニューラッキー」1号店が長岡市の宮内駅前にオープンし、アミューズメントビジネスをスタートさせました。現在は長岡市に3店舗、新潟市に1店舗の計4店舗を経営しており、年間売上は141億円(2009年5月現在)にのぼります。現在、アミューズメント業界全体の年間売上は20数兆円あり、自動車産業や生命保険業界といった日本の主要産業と比肩する規模にまで成長し、当社も一企業としての力を蓄えてきました。ただしパチンコというジャンルは趣味の部分です。産業界が全体的に低迷している近年は、お客様が使える金額も限られてきました。そこで登場したのが1円パチンコや5円スロットです。パチンコは勝ち負けを楽しまれるお客様がいらっしゃる一方で、お小遣い程度の楽しみとしてご来店されるお客様も多くなりました。このような状況にあって、多くの来店者があっても売上が下がるデフレ状況に陥ることを危惧しています。まだ当社にはその影響はありませんが、早目に打開策をとる必要があります。そこで今まで以上に重点を置いているのが「組織力の強化」です。社員の結束力を高めて「より良い店づくり」を徹底し、ファンの拡大を目指しています。
さらに今は未定ですが、さまざまな条件が合ったときには新規出店を打ち出そうと考えています。そのためにも今から店長候補を育成しているんですよ。次々に新規出店する攻めの企業が多い業界ですが、社員の生活を守り、会社を存続させていくためには、リスクの多い「勝つ」企業戦略よりも「負けない」ことが大切です。「負けないでいれば、そのうちに勝ちにつながっていく」。このような考えの下、地道な経営で一歩ずつ歩んでいます。

当社がなぜ「より良い店づくり」にこだわっているのかというと、アミューズメント産業はサービス業であり、顧客満足度(CS)を高めることが重要だからです。それは「お客様のニーズにどれだけ応えられるか」にかかっているので、従来のようなトップダウン形式の経営ではなく、現場の声をしっかり吸い上げるシステムづくりが必要です。このような理由から、アルバイトを含めた全社員に、毎月1回、社長に直接声を届けるレポート(ESレポート)を義務付けています。内容はお客様のことでも、上司のことでも、どのようなことでもOKです。レポートの実施により、社内の風通しが良くなり社員に「やる気」が生まれ、全社員の結束力が高まってお客様に今まで以上に質の高いサービスを提供できるようになりました。
また当社では、一人ひとりのお客様を大切にした「ONE to ONEの接客」を心がけています。お客様に自分の名前を覚えていただけるようにアピールすることはもちろんですが、たとえば常連のお客様であれば好みなども覚えて、次回来店の際にさりげないサービスを提供できるようにスタッフ全員が意思の疎通を図っています。だからといって常連のお客様だけに特別なサービスをするのではなく、初めて来店したお客様にも楽しく過ごしていただけるように接客し、各店舗で地域のお客様のニーズに合ったイベントを企画するなどサービスの向上に努めています。店長クラスになると経営面の仕事が多くなり現場に出る時間が少なくなりますが、当社では1日1回はフロアに出て接客の時間を持つようにしています。ホテルや飲食業など他のサービス分野とはツールが異なるだけで、サービスの本質は変わりません。このように培ってきた質の高いサービスを武器に、将来的にはパチンコ店だけにこだわらず飲食業など他業種にもチャレンジしていきたいと考えています。

社員のやる気を引き出す教育として、3つのポイントがあります。
まず1つ目には、「褒めること」です。長所を伸ばしていくことを根底に置き、気付いた良い点はその場で言葉にして伝えています。それが彼らを認めることになり、さらに自信につながり、苦手なことや短所を克服できるチャレンジ精神を持たせることができるのです。その際、上司もはっきりと本人に伝えることが大切であり、その結果、仲間の存在の大切さを感じられるようになります。2つ目は「分かりやすい業務内容」です。1つひとつの業務を明確に記したマニュアルを作成しました。指導者はそのマニュアルを基に指導するので、全員の指導内容が統一され、誰もが同じようにアドバイスできるようになっています。また、いつでも業務内容を確認することができるので、安心して業務に取り組めます。3つ目は「公平性」です。人間は誰でも相性がありますので、合う・合わないはどうしても生じてしまうものです。しかし一社会人として当たり前ではありますが、あえて「仕事に私情を挟まないこと」と伝えています。
この3つのポイントを踏まえ、3ヵ月ごとにCS評価を行っています。知識は筆記テストで、接客スキルは3ヵ月間を通して計80個の評価項目に基づき評価をしています。必要な知識を正確に覚えていて接客スキルの評価が高い人にはCS手当が付く。「頑張った人にはより多く返す」という考え方です。そして成長すれば仕事も経営面に関わってくるので、一事業主のように大金を扱う醍醐味を味わえる。この点においては他のサービス分野よりもやりがいがあります。
やる気が生まれれば、満足度(ES)も高まり、楽しく働ける。それがにこやかな接客につながり、顧客満足度(CS)を高めることになるのです。だからこそ個人の良いところを褒めて伸ばす教育に力を注いでいるわけです。社員をひとつのパターンにくくらないから、当社の社員は全員、笑顔が自然で生き生きとしているんですよ。実際に他社と比較していただければ、歴然の差があるはずです。

「元気、笑顔」が第一条件です。ただし言われたことをやるだけでなく、自分で考え、体現していく人が理想です。最初は目の前の仕事をこなす能力を求められますが、その先の数字管理や店舗運営といった仕事に関わるとなると、新しいものを創造していく力が必要だからです。自分でレールを敷く仕事に喜びを感じる人ならば、次世代の経営を担っていけると期待しています。
会社とはつねに変化していくものです。その精神だけは変わらなくても、会社が生き残るためには時代に合わせて変化していかなければなりません。ダーウィンの進化論に、「生き残ることのできる生物の種族は最も優れた生態能力を持った種族ではなく、環境の変化に対応できる種族である」といったような意味の言葉があります。私は「次の世代が今の会社のスタイルを壊してもいい」と思っているんですよ。ぜひ現状満足でとどまらず、より良くするためのアイデアを新卒の人にもどんどん出して欲しいですね。
企業の規模が大きくなっていくと、人材教育もマニュアル化して社風もどこかクールな会社が多いようですが、(株)佐藤商事はお客様、社員、会社の関係を大切にしている会社だけにアットホームな雰囲気があります。そこで対応していただいた創業者の3代目にあたる常務の佐藤正亘さんは、記者のどんな細かな質問にも丁寧に、まっすぐに目を見て答えてくださって、経営をリードする人としての大きさを感じました。人それぞれの個性を伸ばす教育もきちんと整備されているので、型にはまらない人生を歩みたい人には最適の環境があり、またサービス業の醍醐味を実感できると思います。